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【第3章】原因分析と改善

SNS炎上が発生した際、最も重要なのは「再発を防ぐための徹底的な原因分析と適切な改善策の策定」です。
企業が適切な対応を取らなければ、同じミスを繰り返し、信頼回復が困難になります。

炎上は単なる「発生した事実の確認」だけでは終わりません。
問題の根本原因を特定し、それに基づいた再発防止策を策定することが求められます。
そのためには、「何が問題だったのか?」だけでなく、「なぜこの問題が発生したのか?」 を深く掘り下げる必要があります。

本章では、炎上後に企業が取るべき「原因分析の手順」を解説し、問題の特性を正しく理解し、適切な改善策を導き出す方法を具体的に紹介します。
また、「なぜなぜ分析」や「より深い分析手法」を活用し、表面的な原因にとどまらず、企業文化や組織体制の問題にもアプローチすることが重要です。

さらに、実際の炎上事例(ケーススタディ)を分析し、どのような原因があったのか、企業はどのように対策を取るべきだったのかを詳しく解説していきます。

目次

原因分析の手順

炎上が発生した際、企業が最初に行うべきことは、「何が問題だったのか?」を正確に把握し、根本原因を特定すること です。
適切な原因分析を行わなければ、場当たり的な対応に終始し、同じ問題を繰り返してしまうリスクが高まります。

今回は、炎上発生から改善策の策定までの一連の流れを、6つのステップに分けて解説します。

1️⃣ 情報収集と現状把握(炎上の発生状況を特定する)
2️⃣ データ収集と証拠の確保(拡散状況や批判の傾向を分析する)
3️⃣ 問題の特性分析と原因究明(内部要因・外部要因を切り分ける)
4️⃣ 炎上拡大プロセスの可視化(拡散経路を特定し、拡大防止策を検討)
5️⃣ 主な課題の洗い出し(問題点を整理し、改善策を検討)
6️⃣ 再発防止策の策定(組織的な対策を立案し、社内に定着させる)

STEP
【情報収集と現状把握】

原因分析の第一歩は、「炎上のトリガー(発端)」を特定し、どのような経緯で問題が発生したのかを明確にすることです。
ここでの情報収集が不十分だと、間違った方向の対策を講じる可能性があるため、正確な現状把握が必須となります。

① 炎上のトリガーを特定する
以下のような観点から、「何が批判の対象となったのか?」 を特定します。

問題視されているポイント
・不適切な表現(誤解を招くコピー、差別的な発言、ジェンダー・宗教問題への配慮不足)
・投稿ミス(誤爆投稿、スケジュールミス、文脈に合わない投稿)
・倫理的・社会的な問題(企業の社会的責任の欠如、ハラスメント・コンプライアンス違反)
・内部情報の漏洩(機密情報・顧客情報の流出)
・プライバシー侵害(許可なく従業員や顧客の情報を投稿)
・著作権侵害(許可を得ずに画像・音楽・動画を使用)

これらの要因を明確にすることで、問題の本質を見極めることができます。

【② 炎上の発生範囲を把握する】
どの規模で炎上しているのか? を明確にし、影響範囲を把握しましょう。
特に以下のポイントを調査してください。

発生プラットフォームの特定
・どのSNSやメディアで炎上しているのか?(X・Facebook・Instagram・TikTok・YouTube・掲示板・ニュースサイト)

炎上の規模を分析
・フォロワー間の小規模な批判なのか、大衆的な注目を集めているのか?
・インプレッション数、リーチ数、コメント数、リツイート・シェア数を数値化し、拡散の勢いを把握する。

批判の内容を分類
・「不快感を示すコメント」「企業への要望」「法的問題を指摘するコメント」などに分類し、批判の本質を見極める。

これらを整理することで、企業の対応の優先順位を決定しやすくなります。

【③ 時系列で炎上の進行状況を記録する
炎上の発生から拡散、企業の対応までの流れを詳細に記録する。
この記録があることで、今後の対策を検討する際の重要な参考資料となります。

📌 例:炎上の進行記録
2024年10月1日10時:問題の投稿が公開
2024年10月1日12時:初めて批判的なコメントが投稿される
2024年10月1日15時:まとめサイトで記事化され、拡散が加速
2024年10月1日18時:公式アカウントで謝罪文を掲載

情報収集の精度が高いほど、適切な改善策の策定につながります。
次のSTEP2「データ収集と証拠の確保」に進む前に、この段階での情報整理を徹底しましょう。

1️⃣ まず「炎上のトリガー」を特定し、何が問題視されているのかを明確にする。
2️⃣ 発生プラットフォームや拡散の規模を分析し、企業が取るべき対応の優先順位を決定する。
3️⃣ 炎上の進行状況を時系列で記録し、後の分析に活かせるようにする。

STEP
【データ収集と証拠の確保】

原因分析の次のステップは、炎上の証拠を正確に記録し、拡散の規模や影響を定量的に把握することです。
データの収集と分析を適切に行うことで、企業が炎上対応の精度を向上させ、法的対応や再発防止策の策定にも役立てることができます。

① 投稿と拡散の詳細を記録
炎上の発生源となった投稿や拡散状況を正確に記録します。
これにより、問題の広がりを把握し、適切な対応策が適切に行えるのです。

収集するデータ
投稿内容(オリジナルの問題投稿・関連投稿・スクリーンショット)
コメント・引用リポストの記録(批判コメントの種類を整理
拡散状況のデータ(投稿のURL、投稿日時、投稿者情報(ユーザー名・アカウントID))
関連ハッシュタグ・キーワードの収集(どのタグが炎上拡大に影響を与えたか)

これらのデータは、問題の分析だけでなく、法的措置を検討する際の証拠 としても重要になります。

② 炎上の影響を定量化
炎上の規模を把握するために、SNSのエンゲージメントデータを分析します。

主な指標
・インプレッション数(投稿が閲覧された回数)
・リーチ数(どのくらいのユーザーに拡散されたか)
・コメント数・リポスト/シェア数
・いいね数・関連投稿数
・ハッシュタグのトレンド入り状況

これらのデータを整理し、「どのタイミングで炎上が加速したか?」を可視化しましょう。
拡散のピークがいつだったのかを把握し、次回の対応時に活かせるようになります。

③ 感情分析を行う
SNS上のコメントや投稿を分類し、炎上の論点を整理しましょう。
これにより、どの部分が最も批判を集めたのか?を明確にできます。

分類の例
【批判的コメント】
「企業の対応が遅い」
「誠意が感じられない」
「倫理的に問題がある」
「企業の社会的責任が欠如している」
「過去にも同じような問題を起こしている」

【中立的なコメント】
「問題の詳細を知りたい」「これって本当に悪いの?」
「企業の公式発表を待ちたい」

【擁護的なコメント】
「企業の対応は妥当」
「炎上しすぎでは?」
「この投稿が問題になるのはおかしい」

批判の中心が「企業の対応」「倫理観」「社会的責任」のどこにあるのかを分類し、改善策を検討しましょう。
擁護的な意見がどの程度あるかを分析し、企業の次の発信戦略を考える際の参考にしてください。

④ 外部サイトの監視
炎上の影響がSNSだけでなく、ニュースサイトや掲示板、ブログなどにも波及しているかを確認します。

チェックすべきメディア
まとめサイト・ニュースメディア(Yahoo!ニュース・LINEニュース・noteなど)
掲示板・匿名サイト(5ch・爆サイ・ガールズちゃんねる)
ブログ・個人サイト(特定のジャンルに影響力のあるブロガーが取り上げているか)

企業は、SNS上のデータだけでなく、外部メディアの影響も分析し、対応策を考える必要があります。
偽アカウントやデマ情報が拡散している場合も、速やかに追跡し、必要に応じて訂正対応を行いましょう。


このデータ収集が、次のSTEP3「問題の特性分析と原因究明」の基盤となります。

1️⃣ 投稿やコメントの詳細を記録し、SNS上の拡散状況を正確に把握する。
2️⃣ 炎上の規模を数値化し、拡散のピークがいつだったのかを可視化する。
3️⃣ 批判の論点を分類し、企業が取るべき対応の方向性を決定する。
4️⃣ SNS以外のメディアでの影響もチェックし、問題がどこまで広がっているのかを分析する。

STEP
問題の特性分析と原因究明

炎上が発生し、情報収集とデータ分析を終えた後は、「何が問題だったのか?」を具体的に特定し、根本原因を究明するプロセスに入ります。
ここでは、投稿内容の特性分析・批判の中心テーマの特定・内部要因と外部要因の切り分けを行い、適切な対策を検討するための基盤を作ります。

 ① 投稿内容の特性を分析
まず、批判の対象となった投稿のどの部分が問題だったのかを明確にします。
以下の観点から、投稿の問題点を具体化します。

表現・言葉遣いの問題
・差別的・偏見的な表現
(例:「○○な肌こそ美しい」といった固定観念の押し付け)
・誤解を招く表現
(例:曖昧な言葉遣いが異なる解釈を生んだケース)
・政治・宗教・ジェンダー問題などのセンシティブなテーマへの言及

投稿の背景
・投稿の意図と実際の受け取られ方のギャップ
・投稿のタイミング
(災害・事件などと重なって不謹慎と受け取られた)
・企業のブランドイメージと投稿内容のミスマッチ
(例:環境問題に積極的な企業が過剰なプラスチックを使用した商品をPR)

画像・動画の問題
・不適切なビジュアル
(例:人種・性別などへの偏ったイメージの押し付け)
・著作権・肖像権の侵害
・プライバシーの侵害
(例:従業員や顧客の無断撮影)

これらの観点から問題を分類し、どの要素が炎上を引き起こしたのかを特定します。

 ② 批判の中心テーマを特定
次に、炎上の批判の論点を整理し、企業の対応方針を決めるための材料を集めます。

批判のカテゴリ分類
・差別・倫理問題
(例:「ジェンダーへの配慮が足りない」「人種差別的な表現」)
・企業の社会的責任
(例:「環境破壊を助長する」「労働環境の問題」)
・顧客対応の不備
(例:「公式の対応が遅い」「謝罪が不十分」)
・事実誤認
(例:「企業のPRが嘘だった」「情報に誤りがある」)

批判者の価値観を理解する
・消費者・メディア・インフルエンサーが何を問題視しているのか?
・企業のブランドイメージと社会的な期待のズレがあるか?
・「何を改善すれば信頼回復につながるのか?」を考える。

批判の論点を明確にすることで、どの部分に対応すべきかを整理できます。

 ③ 内部要因と外部要因を切り分ける
炎上の原因が「企業の内部問題」なのか、「外部からの影響によるもの」なのかを分析します。
これにより、改善すべきポイントをより具体化できます。

✅ 内部要因(企業側の問題)
・社内チェック体制の問題
 →投稿の意図が正しく伝わっていなかった
 →承認プロセスの甘さ(適切なレビューが行われていなかった)
 →社内のコンプライアンス意識の欠如
・SNS運用ガイドラインの不備
 →不適切な投稿のリスクを事前に防げなかった
 →従業員教育が不足していた(SNSの影響を理解していなかった)

✅ 外部要因(企業外の影響)
・ユーザーの誤解や過剰な反応
 →投稿の意図とは異なる解釈で炎上が拡大したケース
 →デマや誤情報が拡散し、問題が拡大
・インフルエンサーやメディアの影響
 →一部のインフルエンサーが批判を拡散し、炎上が加速
 →まとめサイトやニュースメディアが報道し、社会問題化

内部要因と外部要因を分けることで、企業が対応すべき領域を明確にでます。

1️⃣ 問題投稿のどの部分が炎上の原因になったのかを特定する。
2️⃣ 炎上の批判ポイントを分類し、対応方針を明確にする。
3️⃣ 内部要因と外部要因を切り分け、企業が対応すべき領域を整理する。

これらの分析を基に、次のSTEP4「炎上拡大プロセスの可視化」に進み、どのタイミングで適切な対応が必要だったのかを検討しましょう。

STEP
【炎上拡大プロセスの可視化】

情報収集と問題の特性分析が完了したら、次に炎上がどのように広がったのかを可視化することが重要です。
炎上の拡大プロセスを把握することで、企業が「どのタイミングで、どのような対応をすべきだったのか?」を明確にできます。

また、炎上の拡大には必ず「拡散の起点」や「急激に話題化するポイント」が存在します。
このタイミングを特定することで、今後のリスク管理や早期対応の指針を作ることが可能です。

 ① フローチャートを作成し、炎上の拡大過程を整理
炎上がどのような経路で広がったのかを視覚的に整理し、対応の遅れや拡散のきっかけとなったポイントを特定します。

✅ 例:「企業公式アカウントの投稿が炎上した場合の拡大フロー」
1️⃣ 問題投稿が公開される
(この時点では、問題を認識していない段階)

2️⃣ 一部のフォロワーが批判的なコメントを投稿
(小規模な批判。企業が素早く対応すれば拡大を防げる)

3️⃣ 批判的コメントが拡散され、リポスト・引用が急増
(炎上が広がり始めるタイミング。ここでの対応の遅れがリスクを高める)

4️⃣ インフルエンサーが問題を指摘し、さらに拡散
(拡散が加速し、企業の対応が大きく問われる)

5️⃣ まとめサイト・掲示板で話題になり、記事化
(一般ユーザーだけでなく、メディアにも注目され始める段階)

6️⃣ メディアが取り上げ、社会的な問題として扱われる
(この時点での対応次第で、企業のブランドイメージが大きく左右される)

どのタイミングで適切な対応ができていれば、拡散を防げたのか? を明確にすることで、企業の対応が適切だったか、改善すべきポイントを可視化できます。

 ② 拡散ポイントを特定
炎上が大きく広がった要因や拡散のきっかけを分析し、今後のリスク管理の参考にします。

拡散の起点となった要因
・特定のインフルエンサーが問題を指摘し、リポストが急増
・ハッシュタグがトレンド入りし、さらに拡散が加速
・ニュースメディアが取り上げ、社会問題化
・まとめサイト・掲示板にスレッドが立ち、議論が活発化
・YouTubeやTikTokで解説動画が作られ、視聴者の間で話題になる

拡散速度と影響範囲
・炎上発生からどのくらいの時間で拡散が進んだのか?
・どのSNSで特に拡散が加速したのか?
・拡散のピークはいつだったのか?
・トレンド入りしたハッシュタグやニュース記事は何だったのか?

拡散のポイントを特定することで、今後の監視体制を強化し、炎上を未然に防ぐ対策を立てることができます。

 ③ 企業の対応の影響を分析
炎上が発生した際に企業が取った対応が、炎上の収束や拡大にどのような影響を与えたのかを分析します。
企業の対応が「適切だったかどうか」を振り返ることで、今後のリスク管理体制の強化が可能です。

企業対応のタイミング
・初動対応は何時間以内に行われたか?
・最初の公式声明が出されるまでの時間
・対応が遅れたことがさらなる炎上につながったか?

企業対応の効果
・謝罪や説明が行われた後、批判が収まったか?
・対応後に二次炎上が発生したか?
・消費者の反応は改善したか?

適切な対応のパターンを明確にし、今後の対応フローを見直すことが重要です。
逆に、「対応が遅れたことで炎上が加速したケース」も振り返り、同じ失敗を繰り返さない仕組みを作りましょう。

炎上がどのように拡大したのかを可視化することで、企業が対応すべきタイミングを正確に把握し、次回以降のリスク管理を強化することができます。
特に、拡散の起点や急激な拡大ポイントを特定し、企業の対応が炎上の収束や拡大にどのような影響を与えたのかを分析することが重要です。

1️⃣ 炎上拡大の流れをフローチャートで可視化し、拡散の加速ポイントや企業対応の適切なタイミングを整理する。
2️⃣ 炎上が急激に拡大した要因(インフルエンサーの指摘、メディア報道など)を特定し、次回以降のリスク管理に活かす。
3️⃣ 企業の初動対応のスピードや公式声明のタイミングを分析し、炎上の収束または拡大に与えた影響を検証する。

次のSTEP5「主な課題の洗い出し」に進み、企業がどのような改善策を取るべきかを整理していきましょう。

STEP
【主な課題を洗い出す】

炎上の拡大プロセスを分析した後は、「企業のどの部分に課題があったのか?」を具体的に整理し、再発防止のための改善策を検討することが重要です。
このステップでは、炎上の原因となった要素を特定し、課題ごとに具体的な対策を立案する方法について解説します。

 ① 根本原因を特定する
企業のSNS運用や対応フローにおける「どの部分が問題だったのか?」を具体的に特定し、再発防止策の方向性を明確にします。

投稿前のチェック体制の問題
・投稿の内容が適切かをチェックするフローが整備されていなかった
・承認プロセスが形骸化し、十分なリスク評価が行われていなかった

社内のリスク管理体制の問題
・企業のSNS運用ガイドラインが曖昧で、従業員への教育が不十分
・危機発生時の対応フローが確立されておらず、初動対応が遅れた

SNSのモニタリング体制の問題
・炎上の兆候を早期に検知する仕組みがなく、拡散を抑える初動対応が遅れた
・特定の拡散ポイント(インフルエンサーの指摘、メディア報道)に対する事前対策が不十分だった

企業がSNS運用のどの段階で問題を抱えていたのかを整理し、優先的に対策を行う領域を決定しましょう。

 ② 課題ごとに具体的な改善策を設定
特定した課題に対して、「何を改善すれば同じミスを防げるのか?」を明確にし、実行可能な改善策を検討します。

投稿前のチェックフローを強化する
・投稿前の「チェックリスト」を導入し、リスクのある表現を排除
・承認フローに複数のチェックポイントを設け、投稿ミスを防ぐ

リスク管理体制を整備する
・SNS運用ガイドラインを見直し、従業員教育を強化
・危機対応マニュアルを作成し、社内での共有とトレーニングを実施

SNSの監視・モニタリングを強化する
・炎上の兆候を検知するためのモニタリングツールを活用
・特定の拡散ポイント(インフルエンサー・ニュースサイト・掲示板)を重点的に監視する体制を構築

課題ごとに具体的な施策を設定しましょう。

 ③ 優先順位をつけ、実行計画を策定
すべての課題を同時に解決するのは難しいため、重要度と緊急度を考慮し、優先順位を設定することが重要です。

短期的に実施すべき対策
・投稿前のチェック体制の見直し(ガイドラインの改定・チェックリストの導入)
・炎上発生時の初動対応フローの確立(対応テンプレートの準備・担当者の明確化)

中長期的に強化すべき対策
・SNS運用ガイドラインの徹底(従業員向け研修・定期的な見直し)
・リスク管理のためのモニタリング体制の導入(ツールの活用・監視体制の強化)

すぐに実施できる対策と、長期的に取り組むべき課題を整理し、実行計画を策定してください。

炎上の原因を特定した後は、企業が抱える主な課題を整理し、再発防止のための具体的な改善策を策定することが重要です。

1️⃣ 投稿前のチェック体制・リスク管理フロー・SNSの監視体制など、企業の運用プロセスにおける課題を特定する。
2️⃣ 課題ごとに具体的な改善策を設定し、実行可能なアクションプランを策定する。
3️⃣ 短期・中長期の優先順位を決め、持続的に改善を進めることで、炎上リスクを最小限に抑える体制を構築する。

STEP
【再発防止策の策定】

ここまでの分析を基に、企業が今後同じ炎上を繰り返さないための具体的な対策を策定する必要があります。
炎上の再発防止策は、一度だけの対応ではなく、企業文化や運用フローに組み込むことで初めて効果を発揮するのです。

このステップでは、「具体的な防止策をどう実行するか」「企業全体に浸透させるための仕組み作り」 について解説します。

 ① 再発防止策の基本方針を決める
まず、「企業がSNS運用でどのような方針を持つべきか?」を明確にし、具体的な対策の方向性を決定します。

企業のSNS運用の目的を再確認する
・ブランドイメージを向上させるための発信か?
・売上向上のためのプロモーションか?
・ユーザーとのエンゲージメント強化か?

SNS運用の目的を明確にすることで、適切な投稿基準やチェック体制を構築しやすくなります。
そして、以下の基準を明確にし、従業員全員が共通認識を持てるようにしていきましょう。

「投稿基準」と「禁止事項」を定める
・企業の価値観や社会的責任に沿った発信を行うことを徹底
・投稿時のチェックポイント(不適切表現・タイミング・内容の妥当性など)をリスト化
・不適切な投稿のガイドラインを設定し、社内全体で共有

 ② 実施すべき具体的な防止策の策定
再発防止策は「仕組み化」しなければ、時間が経つにつれて形骸化する可能性があります。
以下のような具体策を導入し、持続的に管理できる仕組みを整えてください。

投稿前のチェックフローの導入
・SNS投稿チェックリストを作成し、必ず事前確認を実施
・承認プロセスを厳格化し、責任者による最終確認を義務化
・投稿のタイミングと状況を踏まえ、不適切な時期の発信を回避する

リスク管理体制の強化
・SNS運用マニュアルを作成し、従業員全員に周知
・企業アカウントを管理する担当者に対する研修を定期的に実施
・リスク発生時のエスカレーションフロー(報告・対応プロセス)を明確化

SNSのモニタリング体制を整備
・SNS監視ツールを活用し、炎上の兆候を早期に検知
・コメントや引用ポストの分析を行い、リスク拡大のサインを見逃さない
・特定の拡散経路(インフルエンサー・ニュースサイト・掲示板)を重点監視し、即対応可能な体制を構築

これらの防止策を導入することで、投稿前・投稿後のリスク管理が強化され、炎上の再発を防ぐことができます。

 ③ 社内への定着と継続的な見直し
対策を立てるだけではなく、「実際に社内で定着させ、運用し続ける仕組み」を作ることが不可欠です。
以下のような施策を取り入れ定着化を図りましょう。

社内研修の実施
・新入社員研修の一環としてSNSリスク管理の講習を実施
・SNS運用担当者向けに、最新の炎上事例やトレンドを踏まえた研修を年2回以上実施

定期的なマニュアルの見直し
・企業のSNSポリシーを年1回見直し、時代に合わせた改善を行う
・最新の炎上事例を分析し、対策に反映させる

SNSのモニタリング体制を整備
・従業員がSNSの不適切な投稿を見つけた場合、迅速に報告できる仕組みを作る
・匿名での報告も可能にし、問題が発生した際に早期対応できるようにする

これらの施策を継続することで、SNS運用のリスク管理が組織文化として定着し、炎上の可能性を最小限に抑えることができます。

炎上の再発防止策は、単なるルールの設定ではなく、企業全体で仕組みとして浸透させることが重要です。

1️⃣ 企業のSNS運用の目的を再確認し、投稿基準や禁止事項を明確にする。
2️⃣ 投稿前のチェックフロー、リスク管理体制、モニタリング体制を整備し、再発防止の仕組みを構築する。
3️⃣ 社内研修やマニュアルの定期的な見直しを行い、炎上リスクの低減を継続的に図る。

ケーススタディ

【ケース1】飲食店のアルバイトによる不適切動画投稿

【状況】
あるファミリーレストランのアルバイト店員Aが、閉店後の厨房でふざけている様子を撮影した動画をTikTokに投稿。
動画内では、食材を投げ合ったり、床に落とした食材を拾って調理台に戻したり、使用済みの揚げ油でポテトを揚げる真似をする様子などが映っていた。
Aは「バイト仲間とふざけてみた」というコメントとともに動画を投稿。
この動画は瞬く間に拡散され、「不衛生極まりない」「こんな店で食事をしたくない」といった批判が殺到。
地元テレビ局もこの件を報道し、全国区のニュースにも取り上げられた。

STEP1. 情報収集と現状把握
【トリガー】
不衛生な調理行為、食材の粗末な扱い、悪ふざけを撮影した動画の投稿

【範囲】
TikTokで拡散開始、その後Twitter、Facebook、Instagramなどの主要SNSにも波及。
地元テレビ局の報道により、全国的な認知度まで拡大。まとめサイトや掲示板でも多数取り上げられる。

【時系列】
投稿当日:動画投稿 → バイト仲間内で拡散 → 一般ユーザーへの拡散開始 → 批判コメント多数
2日目:地元ニュースサイト報道 → 本社に問い合わせ殺到 → 公式アカウントで謝罪 → 炎上状態
3日目:全国ニュースで報道 → 不買運動の呼びかけ → 他の店舗にも影響が出始める
4日目:当該店舗営業停止 → アルバイト店員Aを解雇 → 謝罪会見

STEP2. データ収集と証拠の確保
【詳細記録】
問題の動画、拡散された動画のURL、コメント、リツイート/シェア/引用リツイートの内容とURL、投稿者情報(アルバイト店員AのアカウントID、実名、勤務店舗)、拡散に関与した主要アカウント(インフルエンサー、ニュースサイトなど)の情報、炎上発生から収束までのエンゲージメント推移を記録。
※記録はエクセルファイル等で整理し、関係者間で共有する。

【定量化】
TikTok:動画再生回数、いいね数、コメント数、シェア数
X:リポスト数、いいね数、コメント数、インプレッション数、リーチ数
各指標の推移をグラフ化し、炎上のピークや沈静化の傾向を分析

【感情分析】
批判コメントを内容別に分類
(例:「不衛生」「企業の管理体制への疑問」「アルバイト教育の不足」「企業姿勢」「不快感」など)
各カテゴリのコメント数を集計し、割合を算出。
批判の主な論点を把握する。

【外部サイト監視】
まとめサイト、掲示板(2ちゃんねる、5ちゃんねるなど)、ニュースサイト、ブログ記事、口コミサイト(食べログ、ぐるなびなど)における言及状況をモニタリング。
風評被害の拡大状況を把握し、真偽不明の情報やデマの拡散状況も確認する。

STEP3. 問題の特性分析と原因究明
【特性分析】
食の安全を軽視した不適切行為、企業イメージの著しい損失、食品業界における倫理観の欠如、従業員による企業への損害、SNSの拡散力の高さゆえの被害拡大

【批判の中心テーマ】
食の安全に対する意識の低さ、企業の管理責任の欠如、アルバイト教育の不備、企業の危機管理能力の不足

【要因】
◆内部要因
アルバイト教育の不足(衛生管理、SNS利用に関する指導)、SNS利用に関するガイドラインの未整備/周知不足、厨房管理の甘さ(監視カメラの未設置、衛生チェックの不徹底)、危機管理体制の不備(初動対応の遅れ、情報公開の不足)、企業文化の問題(コンプライアンス意識の低さ)

◆外部要因
TikTokの拡散力の高さ、ユーザーの食の安全に対する意識の高まり、メディアの報道による注目度の高まり、競合他社によるネガティブキャンペーンの可能性

STEP4. 炎上拡大プロセスの可視化
【フローチャート】
動画投稿(TikTok)→ バイト仲間内で拡散 → 一般ユーザーへの拡散開始 → 批判コメント殺到 → 地元ニュースサイト報道 → 本社に問い合わせ殺到 → 公式アカウントで謝罪 → 炎上状態 → 全国ニュースで報道 → 不買運動の呼びかけ → 他の店舗にも影響が出始める → 当該店舗営業停止 → アルバイト店員Aを解雇 → 謝罪会見

【拡散ポイント】
アルバイト店員Aのフォロワーによる拡散
特定のインフルエンサーによる拡散(例:グルメ系インフルエンサー、地元情報発信インフルエンサー)
地元ニュースサイトの報道
全国ニュース番組での報道
まとめサイトへの掲載

STEP5. 主な課題を洗い出す
【根本原因】
企業の管理体制の不備(アルバイト教育の不足、SNSガイドラインの未整備、危機管理体制の欠如)、従業員の倫理観の欠如

【再発防止策】
衛生管理に関する研修の徹底(定期的な実施、eラーニングシステムの導入など)
SNS利用ガイドラインの策定と周知徹底(周知徹底のための研修、署名による同意など)
厨房への監視カメラ設置、定期的な衛生点検の実施(チェックリスト作成、責任者の配置など)
危機管理マニュアルの作成と研修(対応フローの明確化、広報担当者へのメディアトレーニングなど)
企業倫理、コンプライアンスに関する研修の実施

【ケース2】化粧品メーカーの広告における不適切表現

【状況】
大手化粧品メーカーA社が、新発売の美白美容液を宣伝するウェブサイトとSNS広告で、「白い肌こそ、真の美しさ。」というキャッチコピーを使用。
広告ビジュアルも白い肌の女性のみを起用。
この表現が「美しさの押し付け」「多様性の欠如」「色人種への差別」として、Xを中心に批判が殺到、炎上状態となる。
A社は過去にも同様の表現で批判を受けており、対応の遅さも問題視された。

STEP1. 情報収集と現状把握
【トリガー】
「白い肌こそ、真の美しさ。」というキャッチコピー、白い肌の女性のみを起用した広告ビジュアル

【範囲】
X、InstagramなどのSNSが中心。
美容系ニュースサイト、まとめサイト、掲示板でも取り上げられる。
海外メディアにも波及し、国際的な批判も受ける。

【時系列】
広告掲載開始 → 消費者からの批判コメント → 美容系インフルエンサーが批判 → 炎上状態
翌日:ニュースサイト、まとめサイトが報道 → 批判がさらに拡大 → 海外メディアが報道
3日目:A社が公式アカウントで謝罪 → 謝罪文が「誠意がない」「過去の炎上を反省していない」とさらに批判を受ける → 二次炎上
4日目:広告出稿停止 → 謝罪会見

STEP2. データ収集と証拠の確保
【詳細記録】
問題の広告のスクリーンショット、批判コメントのスクリーンショット、URL、掲載メディア、投稿日時、投稿者情報、拡散に関与した主要アカウント(インフルエンサー、ニュースサイトなど)の情報、炎上発生から収束までのエンゲージメント推移を記録。過去の類似事例についても情報を収集。

【定量化】
各SNS、ニュースサイト、まとめサイトにおけるエンゲージメント(コメント、リツイート/シェア、いいね、PV数など)を数値化。
グラフ化し、炎上の規模や推移を分析。
広告出稿停止後のエンゲージメントの変化も追跡。

【感情分析】
批判コメントを「美しさの押し付け」「多様性の欠如」「人種差別」「企業姿勢」「対応の遅さ」などに分類し、それぞれの割合を算出。
批判の主な論点や感情の傾向を把握する。

【外部サイト監視】
まとめサイト、掲示板、ニュースサイト、ブログ記事、口コミサイト、競合他社の動きなどを監視。
風評被害の拡大状況や、真偽不明の情報、デマの拡散状況も確認する。
海外メディアの報道内容や反応もモニタリング。

STEP3. 問題の特性分析と原因究明
【特性分析】
・一元的な美の基準の押し付け
・多様性の欠如
・現代社会の価値観とのミスマッチ
・企業の倫理観の欠如
・再発防止への意識の低さ
・対応の遅さによる不信感の増幅

【批判の中心テーマ】
美の多様性、インクルーシブな社会の実現、企業の社会的責任

【要因】
◆内部要因
広告制作プロセスにおける多様性への配慮不足、過去の批判からの学習不足、チェック体制の不備、危機管理体制の不備、企業文化の問題(多様性への理解不足、コンプライアンス意識の低さ)
◆外部要因
社会の美意識の変化、インフルエンサーの影響力、メディア報道の影響、グローバル化による多様な価値観の流入

STEP4. 炎上拡大プロセスの可視化
【フローチャート】
広告掲載 → 消費者からの批判コメント → 美容系インフルエンサーが批判 → 炎上状態 → ニュースサイト、まとめサイトが報道 → 批判拡大 → 海外メディアが報道 → X社が公式アカウントで謝罪 → 謝罪文への批判 → 二次炎上 → 広告出稿停止 → 謝罪会見

【拡散ポイント】
・特定のインフルエンサーの投稿(例:美容系インフルエンサー、多様性を訴えるインフルエンサー)
・美容系ニュースサイト、大手ニュースサイトの記事
・海外メディアの報道
・まとめサイトへの掲載

STEP5. 主な課題を洗い出す
【根本原因】
多様性への配慮の欠如、過去の批判からの学習不足、企業文化・体制の問題

【再発防止策】
・広告制作ガイドラインの見直し(多様性に関する項目の追加、表現のチェックリスト作成)
・多様な視点を取り入れたチェック体制の構築(外部専門家、多様な属性の社員によるチェックなど)
・従業員への多様性に関する研修の実施(無意識バイアス、インクルーシブな表現など)
・危機管理マニュアルの改善、広報担当者へのメディアトレーニング
・社内アンケートなどによる企業文化の現状把握と改善策の実施

今回は、2件の事例をご紹介しました。
実際に原因分析を行う場合は、より深い分析が必要になります。

特に「根本原因」を探るためには「なぜなぜ分析」を深く行い、正しい原因を導き出し根本的な対策をとらなければいけません。

次に「なぜなぜ分析」の方法について解説していきます。

なぜなぜ分析の活用

炎上の原因を分析する際、単に表面的な問題だけを特定するのではなく、「なぜこの問題が発生したのか?」を深掘りし、根本的な要因を明確にすることが重要です。
適切な原因分析が行われないと、再発防止策が的外れとなり、同じ問題を繰り返すリスクが高まります。

これまで解説してきた「原因分析の手順」では、情報収集・データ分析・問題の特性把握を行いましたが、
問題の本質を見極め、適切な改善策を導き出すためには、さらに一歩踏み込んだ分析が求められます。

そこで活用されるのが、「なぜなぜ分析」 です。
これは単に「何が問題だったのか?」を特定するだけではなく、「なぜそれが発生したのか?」を繰り返し問いかけることで、根本原因を明らかにする手法です。
なぜなぜ分析を行うことで、表面的な対応ではなく、本質的な問題解決へとつなげることができます。

今回は、なぜなぜ分析の具体的な手順と活用方法について詳しく解説します。

なぜなぜ分析のメリット
・問題の根本原因を特定できる
・再発防止策を効果的に立案できる
・問題解決能力が向上する
・チームで問題を共有し、共通認識を持つことができる
・問題の構造を理解できる

なぜなぜ分析のデメリット
・時間と労力がかかる場合がある
・思考が行き詰まる場合がある
・複数人で実施する場合、意見が対立する場合がある
・根本原因の特定が難しい場合がある
・適切な「なぜ」を問いかけるスキルが必要

なぜなぜ分析の手順

なぜなぜ分析は、問題の表面的な要因にとどまらず、「本当の原因(根本原因)」を特定するための分析手法です。
単に「何が問題だったのか?」を整理するだけではなく、「なぜそれが起こったのか?」を繰り返し問いかけることで、真の課題を浮き彫りにします。

 ① 問題を明確にする
まず、何が問題だったのか?を具体的に定義します。
※問題が曖昧なままだと、適切な分析ができず、誤った改善策につながるリスクがあります。

具体的な問題の定義例
・企業公式アカウントで、不適切な投稿をしてしまい炎上した
・SNSキャンペーンで個人情報を誤って公開してしまった
・社員が個人のSNSで会社に関する不適切な発言をし、企業のブランドイメージが損なわれた

問題の発生日時・状況・影響範囲を明確にすることで、分析がスムーズに進みます。

 ② 「なぜ?」を繰り返す
問題を明確にしたら、「なぜそれが発生したのか?」を問いかけ、深掘りしていきます。
「なぜ?」を5回程度繰り返すことで、表面的な原因ではなく、根本原因に到達することが可能です。

例:「企業公式アカウントで、不適切な投稿をしてしまい炎上した」
1️⃣ なぜ? → 投稿内容が差別的な表現を含んでいたため、批判を受けた
2️⃣ なぜ? → 事前のチェックフローが機能しておらず、リスクのある表現がそのまま投稿された
3️⃣ なぜ? → 投稿の承認プロセスが形骸化し、運用担当者が単独で投稿できる状態だった
4️⃣ なぜ? → 社内のSNS運用ルールが厳格化されておらず、リスク管理の意識が低かった
5️⃣ なぜ? → そもそもSNS運用チームの教育・研修が不十分で、問題のある投稿を事前に防ぐ体制が整っていなかった

単に「不適切な投稿だった」だけでなく、「なぜその投稿が許可されたのか?」を掘り下げることで、根本的な課題(チェックフローの不備・教育不足)が見えてきます。

 ③ 根本原因を特定する
「なぜ?」を繰り返すことで、最終的に「問題が発生した本当の理由」にたどり着きます。
この根本原因を明確にすることで、表面的な対応ではなく、長期的に問題を防ぐ施策を立案することが可能です。

根本原因の例
・SNS運用ガイドラインが未整備で、リスク管理の意識が徹底されていない
・承認プロセスが適切に機能せず、投稿のチェックが不十分だった
・SNS運用チームの教育・研修が不足し、リスクの高い投稿を判断できる人材がいなかった

根本原因を特定することで、問題の再発を防ぐために「どの部分を改善すべきか?」が明確になります。

 ④ 具体的な対策を立案する
根本原因が明確になったら、それに対する適切な改善策を検討します。
ここでは、「何を、どのように改善すれば、同じ問題が発生しないか?」を具体化するのが重要です。

改善策の例
・SNS運用ガイドラインを明確化し、社内で周知徹底する
・投稿の承認プロセスを厳格化し、チェック体制を強化する
・リスク管理研修を実施し、運用担当者の意識を向上させる
・モニタリングツールを導入し、炎上の兆候を早期に察知する

「再発防止策が実行可能であるか?」を考慮し、具体的な施策に落とし込むことが重要です。

なぜなぜ分析を活用することで、炎上の根本原因を特定し、より効果的な改善策を導き出すことが可能になります。
以下3点を意識して分析を行いましょう。

1️⃣ 問題を明確にし、適切な分析ができるように定義する。
2️⃣ 「なぜ?」を繰り返し、表面的な原因ではなく、本当の問題を掘り下げる。
3️⃣ 根本原因を特定し、再発防止に向けた具体的な改善策を検討する。

また、なぜなぜ分析は、 問題を具体的に記述することで、分析がしやすくなります。
ただし、感情論ではなく、客観的な事実に基づいて分析を行うことが重要です。

可能であれば、複数人で分析を行うことで、多角的な視点を取り入れることができるので複数人で行ってみましょう。

今回の事例では「5回程度」としましたが、必ずしも5回で終わらせる必要はありません。
根本原因にたどり着くまで、何度でも「なぜ?」を繰り返すことも重要です。

また、最も注意すべきポイントは、「失敗の批判」ではなく「根本原因の解明と対策の立案」です。
建設的な意見が出るように、ファシリテーターをつけるのも有効です。

より深く原因分析をする手順

なぜなぜ分析を活用することで、問題の根本原因を特定することができましたが、さらに高度な分析を行うことで、問題の構造をより明確にし、より精度の高い再発防止策を立案することが可能になります。

企業のSNS運用におけるトラブルは、単なる投稿ミスや運用の問題だけでなく、組織の構造や文化、管理体制の欠陥など、複数の要因が絡み合って発生することが多いです。
そのため、「なぜ?」を繰り返すだけでなく、問題がどのような経緯で発生し、どの要素が影響したのかを整理することが重要です。

本セクションでは、直接原因・作りこみ原因・流出原因・根本原因の4つの視点 から、問題をより深く分析する手順について解説します。

分析すべき項目の種類

問題の本質を明確にするために、「直接原因・作りこみ原因・流出原因・根本原因」 の4つの視点で整理します。

✅ 直接原因
問題が発生した直接的なトリガー(目に見える問題)
→ 例:「企業公式アカウントが差別的な投稿を行い、炎上した」

✅ 作りこみ原因
直接原因を生み出した、組織のシステムやプロセスの欠陥
→ 例:「投稿前のチェック体制が機能していなかった」

✅ 流出原因
作りこみ原因を見逃し、問題が外部に発生してしまった要因
→ 例:「リスクのある投稿にもかかわらず、承認プロセスが形骸化していた」

✅ 根本原因
組織の文化やマネジメントレベルでの問題(企業の本質的な課題)
→ 例:「企業全体のリスク管理意識が低く、SNSの影響力を軽視していた」

これら4つの要因を分析することで、問題の構造を深く理解し、的確な対策を立案できるようになります。

STEP
【問題を明確にする】

まず、具体的に何が問題だったのかを明確に定義する ことが重要です。
問題が曖昧なままだと、適切な分析ができず、誤った改善策につながる可能性があります。

✅ 問題の特定方法
・5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)を活用し、事実を整理する
・関係者へのヒアリングを行い、問題の背景を詳しく把握する
・投稿や炎上に関連する資料(スクリーンショット・拡散データ・報道記事など)を収集する

これらの情報を整理し、問題の発生原因をより明確にすることで、次のステップの分析がスムーズに進みます。

STEP
【直接原因の特定と事実確認】

問題の直接的なトリガー(引き金)を特定し、発生の背景を整理します。
この時、現状の運用プロセスごとに整理することが重要です。

✅ 直接原因の特定
・SNS投稿の内容に問題があった(差別的表現・不適切画像・事実誤認)
・投稿ミス(誤爆・予約投稿の設定ミス・タイミングの誤り)
・ユーザーとのコミュニケーションの失敗(炎上する発言・不適切な対応)

直接的なトリガーを特定し、どのプロセスで問題が発生したのかを明確にします。

STEP
【関連プロセスの明確化】

問題が発生したフローを整理し、企業内のどのステップで問題が起きたのかを特定します。

✅ 問題発生フローの例
 1️⃣ SNS投稿案の作成(投稿内容の企画・検討)
 2️⃣ 上長の承認(チェック体制の不備がなかったか)
 3️⃣ 投稿スケジュールの設定・予約投稿(誤った設定がされていなかったか)
 4️⃣ 投稿の実行(個人アカウントと間違えて投稿した・非公開情報を誤って公開)
 5️⃣ 投稿後のチェック(炎上の兆候を把握し、即時対応できたか)

このプロセスを明確にすることで、「どこで問題が発生したのか?」を正しく特定しやすくなります。

STEP
【プロセスごとの問題点を洗い出す】

各ステップにおいて、具体的にどのような問題点があったのかを整理します。

各プロセスの問題点
 1️⃣ SNS投稿案の作成→ 不適切な表現が含まれていた
 2️⃣ 上長の承認→ 内容を十分に確認していなかった
 3️⃣ 投稿スケジュールの設定・予約投稿→ 誤った日時で投稿されていた
 4️⃣ 投稿の実行→ 誤爆・個人アカウントからの投稿
 5️⃣ 投稿後のチェック→ モニタリング体制が機能していなかった

問題が発生した各段階を細かく分析し、リスクのあるポイントを特定します。

STEP
【作りこみ原因の特定】

問題の直接的なトリガー(直接原因)だけでなく、その問題を発生させた「組織のシステムやプロセスの欠陥」を明確にします。

✅ 作りこみ原因の例
 ・SNS運用のルールやガイドラインが不明確
 ・チェック体制が形骸化し、実質的に機能していない
 ・社内のリスク管理教育が不足している

これらの欠陥を放置すると、同じような問題が再発するリスクが高まります。
「なぜこの直接原因が発生したのか?」という観点で、プロセスごとに「なぜなぜ分析」を行いましょう。

STEP
【流出原因の特定】

作りこみ原因が存在する場合、なぜそれが見過ごされ、問題が発生してしまったのか?を特定する必要があります。

流出原因の例
 ・問題投稿に対する警告システムがない
 ・リスクのある表現を検知するチェックフローが機能していなかった
 ・投稿後の監視体制が弱く、炎上の兆候を見逃した

チェック体制の不備やヒューマンエラーなど、問題を見過ごした原因を特定します。
「なぜこの作りこみ原因が放置されていたのか?」という観点で、なぜなぜ分析を行うのが重要です。

流出原因が修正されなければ、今後も同様の問題が発生する可能性が高くなります。
プロセスごとに「なぜなぜ分析」を行いましょう。

STEP
【根本原因の特定】

流出原因を特定した後は、「なぜこのような運用フローが作られたのか?」などを深掘りし、企業全体の課題を明確にします。

根本原因の例
 ・企業のSNSリスク管理体制が未整備
 ・過去の炎上事例から学ぶ仕組みがない
 ・危機対応プロセスが属人的で、ルールとして確立されていない

作りこみ原因と流出原因に対する「なぜなぜ分析の結果」から、それぞれの根本原因を特定します。
根本原因を特定することで、企業の運用方針や組織の文化レベルでの改善が可能です。

STEP
【対策の検討】

特定した各原因タイプに対して、「どのような対策をすれば、再発を防げるのか?」 を具体的に検討します。

短期的な改善策
 ・SNS投稿のチェックフローを強化
 ・リスク管理のための投稿承認システムを導入
 ・投稿ミスを防ぐための従業員教育を実施

中長期的な改善策
 ・SNS運用ガイドラインの定期的な見直し
 ・社内研修を強化し、リスク管理の文化を醸成
 ・SNSリスクの監視・モニタリングツールの導入

実行可能な施策をリストアップし、持続的な対策を講じることが重要です。

より深い原因分析を行うことで、単なるミスの修正ではなく、企業の組織文化や管理体制の問題を明確にし、持続的な改善策を導き出すことができるようになります。

簡単なイメージをお伝えします。

分析イメージ(簡易)

【事例1:個人の利用に関するトラブル】
企業Xの従業員Aが、個人のSNSアカウントから不適切な写真を投稿し、企業Xのイメージを損なってしまった。

【STEP1:問題を明確にする】
20XX年X月X日 XX時XX分、公式アカウントから従業員Aの不適切な写真が投稿された。
投稿からX時間でXX件のリツイート、XX件のコメントがついた。
内容はXXなど。

【STEP2:直接原因の特定と事実確認】
誰が: 従業員A
いつ: 20XX年X月X日 XX時XX分
どこで: 従業員Aの自宅
何を: 従業員Aの不適切な写真(具体的な内容を記載)
なぜ: 従業員Aは、軽い気持ちで写真を投稿した。フォロワーの反応を見て面白がっていた。企業Xのイメージダウンに繋がるという認識はなかった。
どのように: スマートフォンのXアプリ(個人アカウント)から投稿
拡散状況: 投稿からX時間でXX件のリツイート、XX件のコメント

【STEP3:関連プロセスの明確化】
今回は、従業員Aの個人アカウントからの投稿であるため、企業Xの公式アカウント運用プロセスとは無関係なので不要。

【STEP4:プロセスごとの問題点洗い出し】
今回は、従業員Aの個人アカウントからの投稿であるため、企業Xの公式アカウント運用プロセスとは無関係なので不要。

【STEP5:作りこみ原因の特定と分析】
業員AのSNSリテラシー不足。
なぜ①:SNS投稿のリスクに対する理解が不足している。
なぜ②:不適切な写真の投稿が企業イメージに悪影響を与えることを認識していない。

【STEP6:流出原因の特定と分析】
企業XのSNS運用ポリシー/ガイドラインの不備、もしくは周知徹底不足。
なぜ①:個人アカウントの利用に関する規定が明確でない、もしくは存在しない。
なぜ②:従業員への教育が不十分。
なぜ③:SNS利用に関するルールや研修が無いがない。

【STEP7:根本原因の特定】
企業XにおけるSNSリスク管理体制の不備、従業員教育の不足。
企業全体のSNSリスク管理に対する意識の低さ。

【STEP8:対策の検討】
作りこみ原因への対策
従業員向けSNSガイドラインの策定・周知徹底。
従業員向けSNSリテラシー研修の実施 (炎上事例の紹介、リスクの説明、適切な投稿内容の解説など)。
研修受講の義務化、eラーニングシステムの導入による学習機会の提供。

流出原因への対策
社内SNSポリシーの策定・改定 (個人アカウント利用に関する規定の明確化)。
従業員への周知徹底 (全従業員への配布、社内イントラネットへの掲載など)。
定期的な研修の実施 (年次、四半期ごとなど)。
SNS利用に関する相談窓口の設置。

担当者:人事部、教育担当者
期限:1ヶ月以内
使用ツール:プレゼン資料、事例集、ワークシート…etc

【事例2:個人の利用に関するトラブル】
企業Zが実施したSNSキャンペーンにおいて、参加者からDMで収集した個人情報(氏名、住所、電話番号)が、担当者のミスにより、誤って公式アカウントで公開されてしまった。

【STEP1:問題を明確にする】
20XX年X月X日 XX時XX分、企業Zの公式Xアカウントにおいて、先日終了したキャンペーン「〇〇キャンペーン」の応募者からDMで収集した個人情報(氏名、住所、電話番号)が、誤って公開されてしまった。

このキャンペーンは、マーケティング部が企画・実施し、応募者からDMで個人情報を収集する運用フローだった。
収集した個人情報は、スプレッドシートで管理されていた。

今回の情報漏洩は、キャンペーン終了後に、SNSチームの担当者Bが、当選者へのお祝いメッセージを公式Xアカウントに投稿する際に発生した。
投稿には、個人情報が含まれるスプレッドシートのスクリーンショット画像が誤って添付されていた。
この画像には、応募者XX名分のXアカウント名、氏名、住所、電話番号が列挙されていた。

【STEP2:直接原因の特定と事実確認】
誰が:
SNS運用担当者B

いつ:
20XX年X月X日 XX時XX分

どこで:
企業Zの公式Xアカウント

何を:
キャンペーン参加者からDMで収集した個人情報(氏名、住所、電話番号)

なぜ:
担当者Bが、当選者へのお祝いメッセージに、誤って個人情報を含むスプレッドシートのスクリーンショット画像を添付し、投稿したため。

どのように:
担当者Bは、PCでスプレッドシートを開きながら、スマートフォンで投稿文を作成していた。
複数のウィンドウを開いていたため操作を誤り、スクリーンショットを撮影、Xアプリに貼り付けて投稿してしまった。

拡散状況:
投稿はすぐに削除されたものの、一部のユーザーによってスクリーンショットが保存され、拡散。
情報漏洩の事実がニュースサイトなどでも報道された。

【STEP3:関連プロセスの明確化】
SNSキャンペーンにおける個人情報取り扱いプロセスは以下の通り。

①キャンペーン告知、応募受付(マーケティング部)
②個人情報の収集(DM)(マーケティング部)
③個人情報の管理(スプレッドシート)(マーケティング部)
④当選者への連絡(マーケティング部)
⑤当選者へのお祝いメッセージ投稿(SNSチーム)
⑥キャンペーン終了後のデータ削除(マーケティング部)

【STEP4:プロセスごとの問題点洗い出し】
①キャンペーン告知、応募受付
 →問題なし
②個人情報の収集(DM)
 →問題なし
③個人情報の管理(スプレッドシート)
 →SNSチームの担当者Bがアクセスできる状態だった。
④当選者への連絡
 →問題なし
⑤当選者へのお祝いメッセージ投稿
 →担当者Bが個人情報を含むスプレッドシートを誤って添付、投稿した。
⑥キャンペーン終了後のデータ削除
 →問題なし

【STEP5:作りこみ原因の特定と分析】
「③」個人情報を含むスプレッドシートへのアクセス権限が、SNSチームに付与されていた。
なぜ①:アクセス権限設定に関するルールが、部署間で共有されていなかった。
なぜ②:アクセス権限管理システムが導入されていなかった。


【STEP6:流出原因の特定と分析】
「⑤」投稿前に内容を確認する運用になっていなかった
なぜ①:判断が現場任せになっていた。
なぜ②:チェックリストが整備されていなかった。
なぜ③:運用フローやルールを整えていなかった
なぜ④:管理層がSNSリスクについて把握していなかった
なぜ⑤:SNSリスクの勉強をする機会が無かった

【STEP7:根本原因の特定】
個人情報保護に関する意識の低さ。
リスク管理体制の不備。
従業員教育の不足。

【STEP8:対策の検討】

作りこみ原因への対策
アクセス権限設定に関するルールを明確化し、周知徹底する。
パスワード設定など、セキュリティ対策を強化する。
情報管理ポリシーを改定し、全社的に周知徹底する。

◆流出原因への対策
チェックリストの作成。
SNS運用フローの作成。
経営層へのリスク管理研修を実施する。
定期的な情報セキュリティ研修を実施する。

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