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【第4章】最低限知っておくべき法的措置の基礎

SNSは企業にとって、強力なマーケティングツールであり、顧客との関係を深める手段として活用されています。
しかし、その一方で、情報の拡散速度が速く、発言や投稿が炎上するリスクを常に抱えていることを認識する必要があります。

万が一、SNS上での炎上や情報漏洩が発生した場合、適切な対応を行わなければ、企業の評判やブランドイメージが深刻なダメージを受けるだけでなく、法的責任を問われる可能性も出てくるのです。

誤った対応をすると、損害賠償請求や刑事告訴などの法的措置に発展することもあるため、リスクマネジメントの観点から法的知識を身につけておくことが重要になってきます。

この章では、企業のSNS運用において最低限知っておくべき法的措置の基礎を解説します。
SNS運用担当者やマーケティング部門の実務者が、炎上やトラブル発生時に「どのようなケースで法的措置を検討すべきか?」を判断できるようにすることしていきましょう。

目次

なぜ法的措置が必要なのか?

SNSは企業にとって、顧客とのエンゲージメントを深め、ブランドの認知度を高めるための有効なツールですが、情報の拡散がコントロールしにくい特性があるため、トラブルが発生した場合の影響も非常に大きいというリスクを抱えています。

炎上が発生した際、企業が適切な対応を取らなければ、ブランドイメージの低下だけでなく、誤った情報が拡散することで信用を失い、最悪の場合、法的トラブルに発展する可能性も出てくるのです。

企業の対応としては、謝罪や投稿削除などのソフトな方法がまず考えられますが、ケースによっては、より強い対応が求められることもあり、法的措置を講じる必要がある状況も生じます。

今回は、法的措置が必要になる具体的なケースについてみていきましょう。

企業が法的措置を検討すべきケース

SNS上でのトラブルのすべてに対して法的措置を取る必要はありませんが、以下のようなケースでは、企業の信用や経営に大きな影響を与えるため、法的対応を検討する必要があります。

虚偽情報の拡散
企業に関する虚偽の情報がSNS上で拡散され、事実と異なる内容が広まるケース。
→ 例:「〇〇社の製品に有害物質が含まれている」「〇〇社は顧客を騙している」

✅ 法的措置が必要な理由
・放置すると、企業の信頼を大きく損なう可能性がある。
・顧客離れや売上の減少に直結するリスクがある。
・事実に基づかない投稿は、名誉毀損や営業妨害に該当する可能性がある。

誹謗中傷・名誉毀損
企業や従業員に対して、事実と異なる悪意のある投稿やコメントが拡散され、評判を著しく傷つけるケース。
→ 例:「この会社はブラック企業だ」「従業員が不正をしている」

✅ 法的措置が必要な理由
・従業員の精神的な負担が増し、離職率の上昇や採用活動に悪影響を及ぼす可能性がある。
・取引先や投資家の信頼を損ね、ビジネスチャンスを失うリスクがある。
・名誉毀損罪(刑法第230条)や侮辱罪に該当する可能性がある。

偽アカウント・なりすまし・サイバー攻撃
企業の公式アカウントを装った偽アカウントが詐欺行為や偽情報を発信するケース。
また、サイバー攻撃によるアカウント乗っ取りも含まれる。
→ 例:「偽キャンペーンを装い、消費者から個人情報を収集する」「企業アカウントがハッキングされ、不適切な投稿をされる」

✅ 法的措置が必要な理由
・消費者が詐欺被害に遭う可能性があり、企業の責任を問われるリスクがある。
・なりすまし行為によってブランドイメージが毀損される可能性がある。
・犯罪行為として、詐欺罪や不正アクセス禁止法違反に該当する可能性がある。

著作権侵害
企業が作成した画像・動画・文章などのコンテンツが無断で使用・改変されるケース。
→ 例:「企業の広告画像が他のアカウントに無断転載され、誤った情報とともに拡散される」

✅ 法的措置が必要な理由
・企業のブランディング戦略が損なわれる可能性がある。
・誤情報とともに拡散されることで、誤解を招くリスクがある。
・著作権法違反に該当し、法的措置が可能。

営業秘密の漏洩
企業の未公開の機密情報や顧客データなどがSNSで拡散されるケース。
→ 例:「従業員が社内の新商品情報をSNSに投稿し、競合他社に情報が流出する」

✅ 法的措置が必要な理由
・企業の競争力に影響を与える可能性がある。
・取引先との信頼関係が損なわれる可能性がある。
・不正競争防止法に基づく法的措置が可能。

プライバシー侵害
企業が顧客や従業員の個人情報を適切に管理できず、SNS上に流出するケース。
→ 例:「企業が顧客の個人情報を誤ってSNSに掲載してしまう」

✅ 法的措置が必要な理由
・企業の信用が失われ、行政処分や損害賠償請求の対象になる可能性がある。
・個人情報保護法に違反し、規制当局から指導・罰則を受ける可能性がある。

SNS運用において、すべての炎上に対して法的措置を取る必要はありませんが、以下のようなケースでは法的対応を検討することが不可欠です。

最低限以下の内容を覚えておきましょう。

1️⃣ 虚偽情報の拡散
事実無根の情報が広まり、企業の信頼を失うリスクがある。
2️⃣ 誹謗中傷・名誉毀損
企業や従業員の評判が損なわれ、業務や採用活動に悪影響が出る可能性がある。
3️⃣ 偽アカウント・なりすまし・サイバー攻撃
詐欺や不正アクセスなどの犯罪行為につながるリスクがある。
4️⃣ 著作権侵害
企業のコンテンツが無断使用され、ブランドイメージが損なわれる。
5️⃣ 営業秘密の漏洩
競争優位性が失われ、企業の経営に深刻なダメージを与える可能性がある。
6️⃣ プライバシー侵害
個人情報の流出により、企業の信用が損なわれ、法的責任を問われる可能性がある。

法的措置の種類

法的措置は、問題の性質や影響範囲に応じて、適切な方法を選択することが重要です。
今回は、企業がSNS上のトラブルに対応するために活用できる代表的な法的措置について解説します。
★詳細は弁護士などにご相談ください★

1️⃣ 投稿削除請求
問題のある投稿が拡散されている場合、まず最優先で検討すべき対応が「投稿削除請求」です。
誤情報や誹謗中傷の投稿が残り続けると、被害が拡大する可能性があるため、早急な対応が求められます。

✅ 投稿削除請求の方法
・SNSプラットフォームの「報告機能」を活用し、問題投稿の削除を依頼する
・投稿者に対して直接削除を要請する(ただし、慎重に対応する必要あり)
・弁護士を通じて削除請求を行う(対応がない場合)
・裁判所に「仮処分申請」を行い、強制的に削除させる(緊急時)

2️⃣ 発信者情報開示請求
匿名アカウントによる誹謗中傷や虚偽情報の拡散が行われた場合、投稿者を特定するための法的手続きが必要になります。

発信者情報開示請求の流れ(弁護士に依頼してください)
・SNSプラットフォームに対して開示請求(IPアドレスの開示)
・プロバイダ(インターネット接続業者)に対して開示請求(投稿者の氏名・住所など)
・開示された情報を元に、投稿者への法的措置を検討(損害賠償請求・刑事告訴など)
※開示請求には時間がかかるため、緊急時には「仮処分」を利用する方法もある。

3️⃣ 損害賠償請求
SNS上での誹謗中傷やデマ拡散により、企業が経済的損失や信用毀損の被害を受けた場合、投稿者に対して損害賠償を請求することが可能です。

損害賠償の対象となるケース
・デマ情報の拡散により、売上が減少した
・名誉毀損によって、企業の信用が失われた
・従業員が誹謗中傷の被害を受け、精神的な損害を被った

損害を証明するために、証拠(投稿履歴・被害額の計算・影響範囲のデータ)を確保しておくことが重要です。
特に「企業の売上への影響」や「信用毀損の具体的な影響」を証明できると、請求の正当性が高まります。

4️⃣ 刑事告訴
悪意のある投稿が名誉毀損罪・侮辱罪・業務妨害罪などに該当する場合、投稿者に対して刑事告訴を行うことが可能です。

刑事告訴の対象となるケース
・虚偽の情報で企業や従業員を貶めた(名誉毀損罪)
・執拗な誹謗中傷や暴言が繰り返された(侮辱罪)
・悪意のあるデマが拡散され、企業の営業活動に影響を与えた(偽計業務妨害罪)

刑事告訴は「企業の社会的責任を守る」ための強い対応手段として活用できます。
ただし、法的手続きが長期化する可能性があるため、慎重な判断が必要です。

企業がSNS上のトラブルに対して取ることができる法的措置は、問題の深刻度に応じて適切な方法を選択する必要があります。

1️⃣ 投稿削除請求
迅速な対応が可能で、最初に検討すべき措置
2️⃣ 発信者情報開示請求
匿名投稿者を特定し、次の法的措置につなげる
3️⃣ 損害賠償請求
企業の信用・経済的被害に対して、損害回復を求める
4️⃣ 刑事告訴
悪質なケースに対して、厳格な対応を行う

いずれにせよ、SNS炎上に関する法的措置は、専門的な知識が必要となるため、早期に弁護士に相談することが重要です。

法的措置を検討する際のポイント

法的措置は、企業の権利やブランドを守るための重要な手段ですが、すべてのSNS上のトラブルに対して即座に法的対応を取るべきとは限りません。
法的手続きには時間やコストがかかるため、どのような状況で、どのタイミングで、どのような措置を取るべきか慎重に判断する必要があります。

また、法的措置を進めるにあたっては、証拠の確保や専門家との連携、社内対応の整備など、事前準備が非常に重要です。

1️⃣ 証拠の保存
法的措置を検討する際、まず最優先で行うべきことは「証拠の確保」になります。
SNSの投稿は削除される可能性があるため、投稿のスクリーンショットやURL、拡散状況の記録を残すことが不可欠です。

証拠として保存すべきデータ
・問題となる投稿のスクリーンショット(投稿日時・アカウント情報を含む)
・投稿のURL(削除された場合の証拠として活用)
・拡散状況(リツイート数・いいね数・コメント内容など)
・誹謗中傷・デマ拡散の具体的な内容
・企業への被害状況(売上影響・クレーム件数など)

SNS投稿は予告なく削除されることが多いため、できるだけ早い段階で証拠を確保することが重要です。
証拠が不十分だと、法的措置を進める際に不利になる可能性があります。

2️⃣ 法的措置の優先度を判断
法的措置を取る前に、企業としての対応方針を整理し、どの手段を取るべきか慎重に判断します。

企業の対応方針を決定するポイント
・緊急性があるか?(問題投稿が即座に削除されるべきか?)
・法的措置が必要なレベルか?(単なる批判なのか、名誉毀損に該当するのか?)
・対応の影響は?(法的措置を取ることで、さらなる炎上を招く可能性はないか?)
・社内対応で解決できるか?(まず投稿削除や謝罪対応で収束できるか?)

すべてのケースで法的措置を取るのではなく、状況に応じて適切な対応を選択することが重要です。

3️⃣ 専門家への相談
SNS上のトラブルは、法的な問題に発展しやすいため、早い段階で専門家(弁護士・法務部門)に相談することが推奨されます。

弁護士に相談すべきケース
・投稿削除や開示請求を行う必要がある場合
・名誉毀損・著作権侵害などの法的判断が必要な場合
・刑事告訴を検討する場合
・企業の法務部門だけでは対応が難しい場合

法的対応を進める前に、専門家の意見を聞くことで、より適切な対応方針を決定できます。

SNS上のトラブルに対して法的措置を検討する際は、以下のポイントを考慮し、慎重に対応を進めることが重要です。

1️⃣ 証拠を適切に保存する
スクリーンショット・投稿URL・拡散状況などを記録し、法的対応に備える。
2️⃣ 法的措置の優先度を判断する
すぐに法的措置を取るべきか、それとも社内対応で解決できるかを検討する。
3️⃣ 専門家(弁護士・法務部門)と連携する
法的手続きが必要な場合は、早めに専門家に相談し、適切な対応方針を決定する。

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