TikTokをビジネスに活用するためには、アカウントの作り方からすでに戦略が始まっています。
多くの企業が「とりあえず開設して投稿してみる」というスタートを切りますが、それでは戦略的な成果にはつながりません。
TikTokには個人アカウントとビジネスアカウントがあり、企業として取り組むなら後者一択です。
投稿機能の違いだけでなく、データ分析、広告連携、外部リンクの活用など、企業活動に必要な機能がビジネスアカウントに集約されています。
この章では、アカウント開設時に必ず整えておきたい設定と、BtoB・BtoCに応じた初期戦略を整理していきます。
ビジネスアカウントを選ばない理由はない
TikTok運用を企業として本格的に行うのであれば、ビジネスアカウントの選択は必須です。
ビジネスアカウントを使うことで、視聴者の属性データや投稿ごとの分析ができ、戦略的な運用が可能です。
また、プロフィールへのリンク設置や広告連携といった機能も加わり、マーケティング活動の幅が一気に広がります。
ここでは、以下の2つの視点からビジネスアカウントの優位性を確認します。
・アナリティクス機能
・ビジネス情報の表示
アナリティクス機能が使える
TikTokのビジネスアカウントを活用する最大の理由のひとつが、詳細なアナリティクスが利用できることです。
どんな視聴者が、どのようなコンテンツに反応しているのかを「感覚」ではなく「数値」で判断できるため、戦略的な運用が可能になります。
【なぜアナリティクス機能が重要なのか?】
✅視聴者の動きが“見える化”される
フォロワーの性別・年齢・地域だけでなく、投稿ごとの再生回数、視聴完了率、エンゲージメント率(いいね・コメント・シェア)などが把握できます。
✅コンテンツ改善の指針が得られる
どの投稿がバズりやすいか、どのテーマで離脱が多いかが明確になれば、次のアクションを裏付けのあるものにできます。
✅ターゲット層の絞り込みに貢献する
たとえば、20代女性の視聴が多ければ、その層に刺さる演出やトピックに特化して投稿を強化する、といった戦略が立てやすくなります。
ビジネス情報の表示
ビジネスアカウントでは、プロフィールに公式サイトや問い合わせ用のボタンなどを設置できます。
これは単なる装飾ではなく、「信頼性を高め、行動を引き出す」ための設計です。
ユーザーがあなたのTikTokアカウントに訪れたとき、スムーズに“次の行動”へつなげられるかどうかで、マーケティング効果は大きく変わります。
【なぜビジネス情報の表示が重要なのか?】
✅信頼感が生まれる
プロフィールに企業名やURLが明記されていることで、「実在する会社」「ちゃんと活動しているブランド」という印象を与えます。
特にBtoBの場合、この信頼感が取引検討の前提になります。
✅アクション導線を設置できる
商品購入ページや予約フォーム、LPなどへのリンクを配置することで、興味→行動のハードルを下げられます。
✅問い合わせが増えやすくなる
い合わせボタンやメールアドレスを設定すれば、DMよりもビジネス的な相談や取引がしやすくなります。
企業間のやり取りにも対応可能です。
ビジネスアカウントの設定手順
TikTokのビジネスアカウントへの切り替えは、とてもシンプルです。
このステップをしっかり踏んでおくことで、アナリティクスやリンク設置などの機能が使えるようになり、運用の幅が一気に広がります。
ビジネスアカウントの設定方法
以下の流れに沿って、アカウントを切り替えましょう。
1.TikTokアプリを開き、自分のアカウントにログイン
2.右上の「・・・(メニューアイコン)」をタップ
3.「設定とプライバシー」→「アカウントを管理」を選択
4.「ビジネスアカウントに切り替え」をタップ
5.表示される業種カテゴリの中から、自社の業種を選択
6.必要情報を入力し、設定完了
- TikTokアプリを開き、自分のアカウントにログインします。
- 「プロフィール画面」右上の「・・・」アイコンをタップします。
- 「設定とプライバシー」を選択します。
- 「アカウントを管理」をタップし、「ビジネスアカウントに切り替え」を選択します。
- 業種を選択し、必要な情報を入力すれば完了です。

認証アカウントの取得
ビジネスアカウントをさらに信頼性の高いものにしたい場合、TikTokの「認証バッジ(青いチェックマーク)」の取得も視野に入れておきましょう。
認証バッジが付いたアカウントは、ユーザーからの信頼度が一気に上がり、フォロー率やエンゲージメントの向上につながります。
【なぜ認証バッジが重要なのか?】
✅信頼感が格段に上がる
青バッジがあるだけで、公式感やブランドの信頼性が伝わりやすくなります。
✅偽アカウント対策にも有効
他の類似アカウントと差別化でき、誤認を防ぐことができます。
✅媒体への露出強化にも貢献
メディア取材やコラボ依頼など、外部からの接触率が上がることもあります。
【認証アカウントの取得条件】
公式マークは、TikTokの運営側が判断をして付与しています。
こちらから申請することができるTwitter/XやInstagramとは違い、運営側から認証されるのを待つしかありません。
また、公式マークが付く明確な条件も現時点では公開されていません。
そのため、運営側に認知をされるアカウント作りが最も近道であるといえます。
【TikTokの公式マークをつけるためにすべきこと】


戦略的運用の第一歩は“開設時”に決まる
企業アカウントの運用で成果が出ない原因の多くは、「開設時の設計不足」にあります。
アカウントを作ってから投稿内容を考えるのでは遅く、開設の段階で、誰に何を届けるアカウントにするのかを明確にしておくことが必要です。
多くの企業が「とりあえず開設してみる」「投稿しながら考える」という流れでスタートしますが、これは個人アカウントの運用方法と同じです。
企業としてTikTokを活用するなら、アカウント自体を“戦略の土台”として設計する意識が求められます。
とくに、アカウントを通じて何を伝えたいのか、誰に届けたいのか、そのトーンや方向性を固めておかなければ、途中で軸がブレて修正に多くのコストがかかってしまいます。
ここでは、以下の3つの視点から、アカウント開設時に整理しておくべき戦略設計の考え方を解説していきます。
✅誰に向けたアカウントなのか?(ターゲットの明確化)
✅どんな印象・空気感を届けるのか?(世界観・トーンの設計)
✅BtoB・BtoC、あるいは混在企業の場合の方針は?(分離すべきかの判断)
アカウント開設時にこの土台を設計しておくことで、コンテンツ戦略・プロフィール設計・投稿テーマに至るまで、全ての判断軸に一貫性が生まれます。
別章で詳しく行っていくので、まずはイメージをつかみましょう。
誰に向けたアカウントなのか?ターゲット設計がすべての起点
TikTok運用において、最初に考えるべきは「誰に届けるアカウントなのか?」というターゲット設計です。
ターゲットが定まらないまま運用を始めてしまうと、投稿の内容やトーンが一貫せず、どんな層にも響かないアカウントになってしまいます。
企業のSNS運用で最も多い失敗は、「とりあえず動画を出してみる」こと。
これは言い換えれば、「誰に向けて発信しているのか」が曖昧なままスタートしてしまっている状態です。
【ターゲット設計を行う理由】
✅発信内容の方向性がブレなくなる
✅視聴者に「自分向けのアカウントだ」と思ってもらえる
✅動画の構成・演出・ワード選びに一貫性が出る
✅結果としてエンゲージメント率が高くなる
たとえば、次のような違いが生まれます。
【ターゲットが明確な場合】
20代の女性に向けた美容系アカウントとして「見た目」「音楽」「テンポ感」まで設計されているため、投稿のたびにファンとの距離が縮まる。
【ターゲットが不明確な場合】
たまたまバズることはあっても、投稿の内容に一貫性がなく、フォローする理由がなくなる。結果として定着しない。
企業アカウントで成果を出すためには、「誰に届けるのか」を明確にしたうえで、あらゆる設計を逆算する必要があります。
世界観をどう作る?トーン設計とアカウントの“空気感”
ターゲットが明確になったら、次に考えるべきは 「どう感じてもらうか」 という視点です。
TikTokでは、投稿そのものだけでなく、アカウント全体が醸し出す「空気感」も視聴者の判断材料になります。
企業アカウントで成果を出すには、ただ情報を発信するのではなく、一貫したトーンと世界観を持つことが重要です。
【トーン設計とは?】
トーンとは、言葉づかいや表現方法、投稿スタイルなどを通じて伝わる「企業の人柄」のようなものです。
カジュアルなのか、真面目なのか、専門的なのか、親しみやすいのか――
トーンを統一することで、視聴者は「この企業はどんな価値観を持っているのか」を感じ取ります。
たとえば、次のような設計の違いがあります。
【カジュアル寄りのBtoCアカウント】
親しみやすい言葉づかい+トレンドを取り入れた演出+明るい表情とテンポ感
→ ユーザーに「気軽に買える」「日常に取り入れやすい」印象を与える
【信頼感重視のBtoBアカウント】
専門性ある説明+丁寧な口調+落ち着いた編集と色味
→ 「きちんとした会社」「ビジネスパートナーとして安心」という印象を与える
【トーンを決めることで得られる効果】
✅視聴者に「らしさ」が伝わりやすくなる
✅投稿に一貫性が出て信頼を得やすくなる
✅ファン(顧客)との世界観が共有され、支持されやすくなる
なお、トーン設計はプロフィールや動画だけでなく、返信コメントや名前・アイコンにも影響を与える要素です。
一度決めたら投稿や運用全体に徹底して反映することで、「このブランドならではの雰囲気」が定着していきます。
“混在型”の企業はどうすべきか?運用分けの考え方
近年では、BtoBとBtoCの両面を持つ企業も増えてきました。
たとえば、法人向けにシステム開発を行いながら、自社ツールを個人ユーザーにも販売するSaaS企業などがその代表例です。
このような“混在型”の企業は、誰に向けたアカウントなのかが曖昧になりやすいという課題を抱えがちです。
【ターゲットが混在していると起こる問題】
✅投稿内容が定まらず、一貫性がなくなる
✅視聴者が「自分向けの情報なのか」分からず離脱
✅ブランドイメージがぼやけ、フォロワーの質が低下
そこで検討すべきなのが、「アカウントを分ける」という選択肢です。
【アカウント分けの判断基準】
以下のような条件に当てはまる場合、アカウントの分離運用が有効です。
✅toBとBtoCで伝えたいメッセージが大きく異なる
✅顧客のペルソナがまったく違う(例:20代主婦と40代経営者)
✅それぞれで世界観やトーンを切り分けた方が効果的と判断できる
アカウント分けの例:
「公式TikTok(toC向け)」: 商品の使い方やレビュー動画、親しみやすいトーン
「開発部TikTok(toB向け)」: 製品の開発背景や専門情報、誠実・信頼重視のトーン
一方、運用リソースが限られていて分けるのが難しい場合は、投稿の比率と曜日で“ターゲット分け”をするという方法もあります。
【単一アカウントでの工夫】
✅月曜はtoB向け、金曜はtoC向けなど曜日でテーマを分ける
✅プロフィール文に「法人向け情報も発信中」と明記しておく
✅各投稿に「#個人向け」や「#法人様へ」とタグをつける
このように、混在型の場合は「誰に何を届けたいのか」を明確に整理し、世界観がブレない設計と運用を心がけることが大切です。
本当の勝負は“コンセプト設計”から始まる
ビジネスアカウントへの切り替えは、戦略的なTikTok運用のスタートラインにすぎません。
どれだけ便利な機能が揃っていても、それをどう使うかは「設計の方向性」によって大きく左右されます。
たとえば、どんなターゲットに届けたいのか、どんな印象を与えたいのか。
その軸がないまま運用を始めてしまうと、途中で投稿が迷走し、成果が出ないまま止まってしまうケースも少なくありません。
だからこそ重要なのが、「アカウントの設計」です。
コンセプトやプロフィールは、企業の第一印象を決める要素であり、発信する内容にも大きな影響を与えます。
次章以降では、この設計の核心となるコンセプト設計の考え方について詳しく解説していきます。
