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第4章:TikTokアカウントのコンセプト設計

「このアカウント、好きかも」と思わせる“軸”をつくる

TikTokで成果を出すには、まず“コンセプト”が必要です。
それは単なる見た目のイメージや雰囲気ではなく、「誰に」「何を」「どう届けるのか」を一貫して伝える軸のこと。

この軸がなければ、どれだけ投稿を重ねてもアカウントとしての世界観は伝わらず、成果は運任せになります。
逆に、コンセプトが明確なアカウントは、視聴者に強く印象を残し、ファン化・購買・認知拡大につながりやすくなります。

この章では、企業アカウントにおけるコンセプト設計の考え方と、実際の設計プロセスを順を追って解説していきます。

目次

なぜコンセプト設計が最重要なのか?

TikTokをビジネスで活用する際、最も軽視されがちなのが「アカウントのコンセプト設計」です。
しかし、これは家づくりでいうところの“地盤”にあたります。

コンセプトが曖昧なまま投稿を続けても、方向性が定まらず、ファンも育ちません。
「誰に何を届けるアカウントなのか?」が言語化されていなければ、投稿のトーンやテーマがぶれ、どれだけ更新しても効果は出にくくなります。

一方で、明確なコンセプトを持つアカウントは、視聴者に「このアカウントは自分にとって有益だ」と感じさせ、フォローやエンゲージメントにつながりやすくなります。

なぜ最初にコンセプト設計が不可欠なのかを、具体的に解説していきます。

コンセプトがなければ、TikTokは迷走する

TikTokでは、毎日膨大な数の動画が投稿されています。
その中で「選ばれるアカウント」になるためには、視聴者に明確な印象を与える一貫性が必要です。

投稿ごとにテーマやトーンが違えば、視聴者は「何のアカウントなのか分からない」と困惑し、ファン化にはつながりません。
逆に、コンセプトが明確なアカウントは、「この人はこういう情報をくれる」と認識され、リピーターが生まれやすくなります。

例えば、「簡単レシピ」を投稿した翌日に「旅行Vlog」を投稿するなど、ジャンルもターゲットも異なるコンテンツが混在しているアカウントでは、視聴者の記憶に残ることは難しいです。

コンセプトが明確なアカウントは、投稿の一貫性を保つことができ、視聴者に「このアカウントなら次も期待できる」と感じさせます。

良い事例:長崎バイオパーク@nagasakibiopark
「動物たちの日常を楽しむ」という明確なテーマを貫いており、視聴者は“癒し”を期待してフォローします。
一貫した世界観により、初見でもコンセプトが伝わる構成です。

悪い事例:発信テーマがバラバラな中小企業アカウント
日によって社員紹介、商品PR、関係ない流行ネタなどを混在させてしまい、視聴者に“何のアカウントか分からない”印象を与えています。
結果として、フォロワーも増えず、動画の再生数も伸び悩む状態に。

このように、アカウントのコンセプトが明確であることが、全ての投稿の軸になります。
これを明文化していない状態では、コンテンツが迷走し、結果も出にくくなってしまうのです。

コンセプトを設計する前提として、「目的」と「目標」があいまいだと軸がブレます。
たとえば、売上が目的なのに認知ばかり追うような運用では、戦略もコンセプトもチグハグになります。
目的と到達目標を正しく定めたうえで、コンセプトを設計していきましょう。

【目的/目標例】
✅ブランドの認知拡大
・ロート製薬(@rohtotiktok)では、商品に関連する短編動画でブランドイメージを強化。
・3か月でフォロワーを5,000人増やす

商品の販売促進
・ローソン(@akiko_lawson)は、ユニークな動画で特定商品を目立たせ販促する。
・商品紹介動画のクリック率を10%以上にする

ファン化
・サンリオ商品開発部(@sanrio_planner_official)は、商品開発の裏側を見せることで、ファンとの絆を強化。
・1か月で視聴者のコメント数を500件にする

3C分析で“外さないコンセプト”を作る

どれだけ魅力的なアイデアがあっても、見る人に刺さらなければ意味がありません。
そのため、アカウントのコンセプトを決める際は、「自分たちが伝えたいこと」だけでなく、「誰に、どんな文脈で届けるか」という視点が欠かせません。

そこで活用するのが 3C分析です。
マーケティングの基本フレームワークですが、TikTokアカウント設計にも非常に有効です。

Customer(顧客)— 誰に届けるのかを明確にする

アカウント運用において最も大切な問いのひとつが、「誰に見てもらいたいか?」という視点です。
これが曖昧だと、発信内容もトーンもぶれてしまい、誰の心にも刺さらないアカウントになります。

まずは、理想の視聴者像(ペルソナ)を細かく言語化することが出発点です。

【ペルソナ設計のポイント】
・年齢、性別、居住地、職業などの基本情報
・SNSの利用目的と視聴時間帯
・興味関心や悩み
・行動パターンやライフスタイル

たとえば、アパレル系のTikTokアカウントを考える場合、

・22歳 女性 大学生
・平日は講義とアルバイト、夜はSNSで情報収集
・おしゃれはしたいけどお金はかけられない
・「プチプラでもオシャレに見えるコーデ」に強く反応する

このように、誰に届けるかを細かく定義すれば、「5,000円以下で作るデートコーデ特集」と題したシリーズ動画を投稿といったように、どんなテーマを選ぶか、どんな表現をするかも自然に見えてきます。

一方で、よくあるNG例は以下のようなものです。

・プチプラファッションブランドに興味がある
・10代~40代の女性

このような設定だと、ターゲット層が広すぎて逆に「誰にも響かない」投稿になりやすくなります。
10代には子どもっぽく、40代には若すぎる印象を与え、どの層にも響かない。といったイメージです。

Competitor(競合)— 競合アカウントの分析で“勝ち筋”を見つける

TikTokは短期間で大量の投稿が行われるプラットフォームです。
つまり、同じジャンルや業界で競合するアカウントも数多く存在します。
だからこそ、自社の「ポジショニング」を明確にしなければ、埋もれてしまう可能性が高くなります。

競合を知ることは、自分の立ち位置を定めるための重要な作業です。

【競合分析で見るべきポイント】
・投稿ジャンル・スタイル(情報系/エンタメ系など)
・投稿の頻度・時間帯
・使用しているハッシュタグ
・再生数やいいね・コメントの傾向
・コメント欄の視聴者の反応

競合が「どのように投稿し、視聴者にどのように受け入れられているか」を観察することで、自社の強みや差別化ポイントが見えてきます。

良い事例:競合分析をもとに差別化したケース
・他社のDIY系アカウントが「完成品→手順紹介」という流れで投稿していた
・自社は「未完成→完成までの変化を一気見できる構成」で投稿を設計
・結果として視聴完了率が上昇し、フォロワー数が急増

悪い事例:競合分析を怠ったケース
・競合と似たような動画内容・撮影スタイルで投稿
・ユーザーから見て「どれも同じに見える」状態になり、フォローが伸び悩む

特に重要なのが、他ジャンルで伸びているものを自社にも取り入れられないか?
という視点です。

例えば、

①工場の制作工程の動画が伸びている
②「モノを作る”過程”が面白いのかも?と仮説を立てる
③他の伸びている動画も調べる
④同様に「過程」の要素で伸びている動画が多数見つかる
⑤DIY系アカウントの動画を「未完成→完成までの変化を一気見できる構成」で”過程”を見せることで大当たりする

というイメージです。

競合を「敵」として排除するのではなく、「教科書」として観察する姿勢が成功には欠かせません。
そこから得られたヒントをもとに、自社だけの立ち位置=勝ち筋を定めましょう。

Company(自社)— 自社の“魅力の源泉”を棚卸しする

3C分析の最後の視点は「Company(自社)」です。ここでは、TikTokというメディアを使って発信すべき“自社の強み”や“魅力”を明確にします。

視聴者に刺さるアカウントを作るためには、外に目を向けるだけでなく、自社の内側にある価値にもしっかり目を向けることが重要です。

【棚卸しの視点:以下のような観点から洗い出します】
・商品やサービスの特徴(機能性、こだわり、実績など)
・競合と違う切り口(例:製造工程の可視化、専門家による解説)
・社内のストーリー性(例:商品開発の裏話、創業ストーリー)
・社員やスタッフの個性(接客力、人間味、キャラクター性)
・日常に役立つ使い方や応用シーン

特に、「自社では当たり前だけど、他社では当たり前じゃない」ということがかなりの確率で存在します。
自社分析では特に、この「当たり前じゃない」を見つけることがキーポイントです。

こうした情報を洗い出すことで、「どの価値を軸にコンセプトを作るか」が明確になります。

良い事例自社の強みを活かしたアカウント設計
アイリスオーヤマ【公式】(@irisohyama_official

アイリスオーヤマは、家電・生活用品メーカーとしての自社の強みを、「生活の中で役立つ具体的シーン」を通じて伝えています。
「商品そのもの」よりも、「使うことで得られる価値や便利さ」に焦点を当てた設計が、ユーザーの共感と保存・シェアにつながっています。

結果、ただの商品の紹介ではなく、「便利さ」や「暮らしの変化」が視覚的に伝わる構成となっており、自社商品の本質的価値=Companyの強みを軸にした設計になっています。

悪い事例:特徴が伝わらないアカウント
商品のスペックを羅列しただけの投稿
→他社との違いが伝わらず、視聴者の記憶に残らない

コンセプトを言語化する方法

3C分析を通して「誰に」「競合と比べてどう違い」「自社のどんな価値を届けるか」が見えてきたら、次はそれを“言葉”として明確に表現するステップです。

ここで曖昧な表現のまま止まってしまうと、結局投稿方針もぼやけてしまいます。
視聴者にも、自分たち自身にも伝わるように、コンセプトを“一言で言える”形に落とし込むことが重要です。

一貫性ある言葉に落とし込む“型”を使う

コンセプトを言語化する際に役立つのが、「型(フォーマット)」です。
漠然とした印象で終わらせず、アカウント運用全体のブレない軸として機能させるためには、この型に当てはめて整理することが効果的です。

【代表的な構文:「誰に」「何を」「どう伝えるか」】
この構文は、コンセプト設計の基本かつ王道です。TikTok運用だけでなく、マーケティング全体にも応用できる考え方として知られています。

【構文】
「◯◯な人に、△△な価値を、□□なスタイルで届けるアカウント」

使用例①:長崎バイオパーク(@nagasakibiopark
構文に落とすとこうなります。
「動物好きな人に、癒しとユーモアを、日常の一コマ動画で届けるアカウント」
→動画全体に「癒しと笑い」が貫かれており、視聴者は“見る理由”が明確です。

使用例②:ローソン公式(@akiko_lawson
「コンビニユーザーに、新商品の魅力を、トレンド感ある演出で届けるアカウント」
→日常的に商品を買うユーザーに対し、「今すぐ試したくなる」動画構成が一貫しています。

このようにコンセプトを決めることで、

・投稿の一貫性が保てる
・チーム運用でもブレが起きにくくなる
・視聴者に伝えたいメッセージが明確になる
・動画の演出やトーンがブレず、ブランドとしての印象が強化される

メリットがあります。

コンセプトを言葉に落とし込むことは「なんとなく運用」を脱し、戦略的な投稿を可能にする第一歩です。

アカウント設計の“NGワード”に注意

どれだけ綿密にペルソナや競合、自社の強みを分析しても、最後に言語化する「コンセプト」が曖昧な表現だと、全体がぼやけてしまいます

特に社内メンバーで方向性を共有する場面や、投稿内容を判断する場面では、「なんとなく伝わりそうな言葉」はむしろトラブルの元です。
ここでは、やりがちなNGワードと、それがなぜ問題なのかを整理します。

「ありがちだけど危険」なNGワード例
NG①:「みんなに届くアカウント」
→届けたい“誰か”がいなければ、結果的に“誰にも刺さらない”投稿になります。
ターゲット不在=戦略不在です。

NG②:「とにかく面白い動画を」
→“面白さ”の定義が人によって違いすぎるため、運用メンバー間で認識がズレます。
意思決定に迷いが生まれ、ブレた投稿が続いてしまう原因になります。

NG③:「とりあえずトレンドに乗る」
→方向性も目的も定まらないまま、話題に飛びつくような運用は、アカウントの軸を崩壊させます。
視聴者に「結局何のアカウントなの?」と思われて終了です。

コンセプトが曖昧だとどうなるか?
NGワードを使ったコンセプトでは、次のような問題が発生します。

・社内での判断基準がバラバラになる
・投稿に一貫性がなく、ファンが定着しにくくなる
・コンテンツの軸が無いため、エンゲージメントが低下する
・視聴者に「このアカウント、なんかよく分からない」と思われて終わる

ポイントは“誰が聞いてもズレない言葉”で表現することです。

例えば、

NG:「面白い動画を発信したい」
OK:「思わず突っ込みたくなる“動物のリアルな日常”を届ける」

NG:「幅広い層にアプローチ」
OK:「30代共働き主婦が共感する“時短料理アイデア”を発信する」

NG:「なんでも試してみたい」
OK:「初心者が“まず買うべき○○”を絞って紹介するガイド系アカウント」


「うちのコンセプトってこれだよね」とチーム全員が同じ認識を持ち、投稿のブレを防ぐためには、具体的で、行動に落とし込める表現が必須です。

コンセプト設計は、TikTok運用すべての“出発点”

TikTokで成果を出す企業アカウントには、共通点があります。
それは、単に「いいね数」や「バズ」だけを追うのではなく、アカウント全体として一貫した“軸”を持っていることです。

この軸こそが「コンセプト」。
誰に、何を、どう伝えるのかを明確にしたうえで、すべての投稿がそれに沿って運用されています。

一方、成果が出ないアカウントの多くは、この「コンセプト設計」が曖昧なまま運用を始めてしまっているケースが大半です。
思いつきで動画を作り、流行にただ乗るだけの投稿が続けば、視聴者に「何のアカウントか分からない」という印象を与えてしまいます。

本章では、そうした迷走を防ぐために必要なステップを体系的にお伝えしました。

目的と到達目標の設定
3C分析をもとに「誰に・競合とどう差別化し・自社の何を伝えるか」を明確化
✅その内容を“言葉”として表現し、ブレない指針に落とし込む
✅NGワードを避け、チーム全体で共有できる状態に整える

このプロセスを経て、初めてアカウントは「戦略的に運用する土台」が整います。

そして次章では、このコンセプトを視覚的に伝えるための“プロフィール設計”に入っていきます。

どんな文言や構成が視聴者の信頼を引き出すのか?
アカウントの第一印象を左右する「プロフィール設計の極意」を、具体例とともに解説していきます。

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